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遺言書を書いたのは、43歳の秋だった。きっかけは父の死だ。父が亡くなった後の相続手続きで、遺言書がなかったために兄弟間で揉めた。結論としては円満に解決したが、「遺言書があればこんなに時間も気力も使わなかった」という実感が残った。
その経験から約1年後、自分で公正証書遺言を作成した。当時、子どもが2人(8歳・5歳)、不動産1件(自宅マンション)、預金・株式などの資産があった。このままもし自分が突然死んだら、妻と子どもたちが困るだろうという思いが背中を押した。
この記事は、公正証書遺言の作成体験と、なぜ40代での作成をすすめるのかについてまとめたものだ。
なぜ40代で遺言書を書いた方がいいのか
「遺言書は高齢者が書くもの」というイメージがある。しかし相続問題の発生は年齢に関係ない。交通事故、病気、突然の心臓発作——40代でも命に関わる事態は起きる。そして40代は多くの場合、財産がある程度形成されていて、かつ「子どもが未成年」という時期が重なっている。
特に以下の状況がある人は40代での作成を強くすすめる。
- 子どもがいる
- 不動産を所有している
- 会社を経営している(事業承継)
- 再婚をしている(前の配偶者との子がいる)
- 財産を渡したい・渡したくない特定の人がいる
公正証書遺言と自筆証書遺言の違い
自筆証書遺言
本人が全文・日付・氏名を自書し、押印する方法。費用はほぼゼロ。ただし、形式の不備(日付がない・代筆がある)で無効になるリスクがある。また、死後に発見されなかった場合や、偽造リスクもある。2020年から法務局での保管制度が始まり、安全性は上がっている(1件3900円)。
公正証書遺言
公証人(元裁判官・元検察官などの法律専門家)が作成する遺言書。公証役場に保管されるため、紛失・改ざんのリスクがない。形式不備での無効も起きない。費用がかかる(後述)が、最も確実性が高い。
自分が公正証書を選んだのは、「確実性」を重視したからだ。形式不備で無効になるリスクをゼロにしたかった。
公正証書遺言の作成手続き——実際にやったこと
ステップ1:遺言の内容を決める
まず「誰に何を渡すか」を決める。自分の場合はシンプルで、「自宅不動産と預金・金融資産の全てを妻に相続させる、子どもたちには成人後に遺留分として」というシナリオにした。
内容を決める際に司法書士(知人の紹介)に相談した。遺留分侵害の確認や、言葉の書き方(「相続させる」と「遺贈する」の違いなど)を教えてもらった。司法書士への相談料は1時間1万1000円だった。
ステップ2:公証役場への相談・予約
最寄りの公証役場(東京都内)に電話して、「公正証書遺言を作りたい」と伝えた。担当の公証人が決まり、遺言の内容の概要を電話で説明した。その後メールで遺言の内容(メモ書きレベルで可)を送るよう指示された。
ステップ3:証人2名の手配
公正証書遺言の作成には証人2名が必要だ。証人になれない人がいることに注意。
- 未成年者
- 推定相続人(妻・子どもなど、遺産を受け取る側の人)
- 受遺者(遺言で財産をもらう人)
- 上記の配偶者・直系血族
要するに、相続に関係する家族は証人になれない。自分は会社の同僚2名(当時30代・40代)に頼んだ。証人には事前に「遺言の内容を見る立場になる」と伝えた上で承諾してもらった。証人に対して謝礼を渡す慣習があり、自分は1万円ずつ包んだ。
証人を頼める人がいない場合は、公証役場に相談すると紹介してもらえることもあるし、司法書士・行政書士事務所に有料で依頼することも可能だ(1名あたり1〜2万円程度)。
ステップ4:公証役場での作成当日
予約した日時に本人・証人2名が公証役場に出向いた。公証人が読み上げる遺言書の内容を確認し、問題なければ署名・押印する。所要時間は約1時間だった。
持参したもの:
- 本人の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)
- 実印
- 戸籍謄本(相続人との関係を証明するため)
- 不動産の登記事項証明書
- 証人2名の顔写真付き身分証明書
公正証書遺言の費用
公証役場の手数料は、財産の価額によって決まる。
| 財産の価額 | 手数料(概算) |
|---|---|
| 100万円以下 | 5000円 |
| 100〜200万円 | 7000円 |
| 200〜500万円 | 1万1000円 |
| 500〜1000万円 | 1万7000円 |
| 1000〜3000万円 | 2万3000円 |
| 3000〜5000万円 | 2万9000円 |
自分の場合は不動産と金融資産の合計が約4500万円で、手数料は約5万5000円だった(複数の相続人ごとに計算される)。司法書士への相談費用(1万1000円)と証人への謝礼(2万円)を含めた総費用は約8万6000円だった。
作成後にやったこと
公正証書遺言の原本は公証役場に保管される。自分は謄本(写し)を受け取った。その謄本を自宅の金庫に保管し、妻に「遺言書を作った、○○公証役場に保管してある」と伝えた。
また、遺言書の内容に合わせて、預金口座一覧・保険証券一覧・株式口座情報をまとめた「エンディングノート」を作って同じ金庫に入れた。遺言書があっても、資産の全貌が分からなければ相続手続きが複雑になるためだ。
遺言書を書いて変わったこと
書き終えた直後は、不思議と気持ちが軽くなった。「もし自分が突然死んでも、妻と子どもたちは困らない」という状態にしてある、という安心感だ。
40代で遺言書を書くのは「縁起が悪い」という感覚があるかもしれない。でも遺言書は「死の準備」ではなく「残す人への準備」だと今は思っている。40代が最も人生の重要な資産形成期であり、かつ子どもが未成年という時期に重なる。今が最も必要なタイミングかもしれない。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言ではありません。個別の法律問題については、弁護士等の専門家にご相談ください。
